大野一雄 年代記 1906-2010


2010年6月1日に他界した世界的舞踏家大野一雄さん。103才でお亡くなりになられたのですが、どう考えても1000年(!?)は生きると思っていたので意外でした。そんな訳でお店ではちょっとした追悼コーナーを作っています。

中でもその中心に置いてあるのは、最新刊の「大野一雄 年代記 1906-2010」。大野一雄さんを慕い、BankART Studio NYKで7月17日に開催された「ブラヴォー! 大野一雄の会」にあわせて出版された記念書籍です。1906年の誕生から逝去された2010年までの103歳と7ヶ月の生涯を詳細な年表に写真図版48点(カラー15点)、小さな画像データ80点、書き下ろしを含むテキスト7点から構成しています。

それにしても驚いたのは、これだけの濃密な内容を、亡くなった6月1日から7月17日の「ブラヴォー! 大野一雄の会」の会場販売に間に合わせて制作出来たことです。
年表は従来のホームページ上でもある程度のものはあったが、新聞評や劇場名などまで入った資料性の非常に高いものになっている。無論、バイリンガル。テキストも、ヨーロッパで唯一の大野一雄アーカイブがあるボローニャ大学の先生でもあるエウジェニア・カジニ・ロパさんやルー・ボグダン、「父大野一雄」(永谷幸人、大野慶人)が書き下ろしであり、これらの原稿の依頼から構成更にはバイリンガルにする為の翻訳作業、そしてレイアウトするまでがそんな短時間で出来るとは! 

テキストは他に既発表のものから「新潮」で掲載された角田光代の文章やブラジルのテアトル・マクナイマの演出家アントゥネス・フィーリョなど、合わせてテキストは7本もバイリンガルで収録されている。終りにはカラーの写真グラビア、そして年表の下の枠には小さな画像データで各国での公演のチラシ写真があり、まさにテキストとビジュアルで辿る103年になっている。

興味深いのは22ページの「戦線より」で、大野さんの戦時中の姿が垣間見える貴重なテキストです。団報以後発表されることが無かったそうだ。また「介護日記」は介護士の資格を持つ研究生4人が介護の連絡帳として書いていたノートで大野さんが介護中に漏らした言葉が記されている。

と、まあしっかりした出来上がりになっている。編集作業はかんたのおふたりに、ベルリン在住で「魂の糧」や「稽古の言葉」の英訳を行った翻訳家、そして装幀を担当したデザイナーの4人をほぼ中心に、介護日記でも登場する研究生たちが加わったそうだ。話を聞くとそれは大変な作業だったようだが、「大野さんへの愛が無いと出来ない作業です」との言葉通りの愛情ある本になっています。(文:悦)







book data:
title: 大野一雄 年代記 1906-2010
publisher: かんた
author: 大野一雄舞踏研究所 編
price: 1575(税込)