絶影新聞 ZETUEI FONTS (加納佳之) 

先週の28日の土曜の真夜中12時から29日の日曜の朝に掛けて六本木アートナイトと言うイベントの一環で、ヤノベケンジの「ジャイアント・トらやん」の出現した六本木ヒルズのアリーナに限定出店しました。

春とは思えぬ寒さの中、唯一の暖房は、ジャイアント・トらやんがごくたまに火を噴く一瞬の熱気だけでした。

そんなわけで、野外のテントでの販売は体にかなりきつかったのですが、イベントに来たお客さんが商品に示す反応が良かったので嬉しいものでした。

その会場で、一番評判がよく売れたのが、「絶影新聞」でした。
「絶影新聞」は、東京TDC賞2006タイプデザイン賞受賞するなど、その独自の活動に評価も高い、デザイナー加納佳之さんの開発した書体による新聞です。2008年5月24日〜7月4日にプロジェットで開催したZETUEI FONTS展『メッセージなき、プロパガンダ1996-2008』に合わせて発行された、絶影書体の1年分の新作を集めた新聞です。

絶影書体について、加納さんは『「読めない文字に書体としての価値は無い」「普遍性と可読性こそ書体の本分」という妥当な意見をよそに、頑なな設計思想で書体を制作。それらの文字がバラバラに並んでいたとしても、模様のようにしか感じられない。しかし、そのような文字が普段見慣れた形に集合した途端これらを文字として認識し、文字列の中から読める単語を発見したり実際に読めてしまうことに驚きを感じる。

模様のようなものを見る目から、機能をもった文字を読む目に変わるギリギリの境界線上にある不安定さは書体であり、同時にデジタル入力時代の手書き文字ではないだろうか。』と語り、新聞にする事で、『全体像からの文字の想像』『文字、文章であると認識→読める可能性』が生まれる事を意図して制作されたものです。実際会場のお客様たちの反応も、手にした新聞を読もうとして、読めたときの面白さに感動する姿は生き生きしていました。

ひとつの書体がこれだけアクティブに、人の興味や感動を引き出す姿が見れる商品は中々お目にかかれません。(文:悦)

book data:
title: 絶影新聞 
publisher: ZETUEI FONTS
author: ZETUEI FONTS (加納佳之) 
price: 100(税込)