HIROSHIMA 1958

progetto-magazziniere2009-04-18

 この本を手にしてページを捲ると、1958年の広島の街の活き活きとした風景が飛び込んでくる。笑顔の印象的な子どもたちが数多く現れ、建築中の広島球場が見えたり、美しい構図で叙情的な自然と人々の清々しい活気が素直に見えてくる美しい写真の数々。人なつこい優しい眼差しが写真を見る喜びに浸らしてくれる。
 一方で、この本自体の作りは、この写真の背景を掘り下げ取り出す事に夢中になった結果による、後半の60ページに及ぶ長大なテキスト類から見えてくる。それは被爆都市広島の復興の記録となる写真であること。そして、何よりも映画史に残る不朽の名作である「二十四時間の情事」のヒロインである女優エマニュエル・リヴァがロケ中に撮った写真であること。
 テキストはリヴァへのインタビューや評論、アラン・レネからマルグリット・デュラスへの手紙などで、この映画の背景や歴史的重要性が多いに語られていく。それらは、映画好きや歴史に関心の強い人には貴重この上ないものになっています。ただ、映画を離れて、被爆という歴史を離れて、この写真集を見た時に、写真そのものの魅力が強力にここにあるだけに、本の前半と後半で2冊の違う世界が宿っているように感じるのは僕だけでしょうかね。もったいない気がするのですが... (文:悦)

book data:
title: HIROSHIMA 1958 
publisher: インスクリプト
author: エマニュエル・リヴァ(写真) 港千尋、マリー=クリスティーヌ・
ドゥ・ナヴァセル(編) 関口涼子(訳)
price: 3675(税込)