写真詩集『生きる』 サイン本 詩:谷川俊太郎 写真:松本美枝子

 2月のある日、突然営業に来た出版社の人の名刺にはナナロク社代表取締役とあった。出版の世界で、編集者として営業マンとして活動していた1976年生まれの3人が始めた出版社だそうだ。立ち上げの頃の話を聞くと、最初の本は谷川さんの詩集を写真と合わせるというもので、企画が始まったそうだ。
 その詩「生きる」は1980年代にサンリオから出た「うつむく青年」に収録された名作で、国語の教科書や、卒業式での"群読"テキストとしても馴染みの深いもの。まず谷川さんに写真集を何冊も見ていただき、その中から気に入った写真家を選び、交渉。そうしたら、選ばれた松本さんは昔から谷川さんのファンだったという偶然もあったそうだ。
 松本さんはそこから1年かけて詩にあわせた、詩からインスパイアされた写真を撮り下ろしていく。出来上がったものは、1行に1枚が響きあう、美しい1冊の写真詩集に仕上がる。そして、谷川さん本人も常に口にするような完璧な共著、まさに詩と写真の共鳴したコラボレーションがうまれた。
 ちなみに、この本の担当をした女性編集者も76年生まれ。さらに、制作時の谷川さんの年齢も76歳と、ナナロクだらけだったそうだ。まさにいろいろな縁が作った本なのでしょうね (文:悦)

book data:
title: 写真詩集『生きる』 サイン本
publisher: ナナロク社
author: 詩:谷川俊太郎 写真:松本美枝子
price: 1575 (税込)