村田朋泰展 夢がしゃがんでいる」カタログ

 プロジェットのお店には、展覧会のカタログも、取扱のお話を頂けたものについては喜んで扱わせていただいていることもあって、多数あります。僕が、個人的にもその作品世界が好きな村田朋泰さんの「村田朋泰展 夢がしゃがんでいる」カタログもそんなひとつです。
2008年4月12日から5月25日にかけて平塚市美術館にて開催されたこの展覧会は、村田さんのアニメーションの上映や作品の模型などを展示するよくある展示のみならず、その独特な意匠を取り込んだ遊べる空間芸術へと展開していました。大きなセットで、作品の舞台を再現し、2階のベランダからでないと見えない位置に上映される映像や、むかしのジュークボックスを改造し、三ノ函半島の100名所のアニメーションが見られる『百色旅館ジュークボックス』や、なつかしのゲームが楽しめるゲームコーナーなどが設置され、村田さん独特の哀愁やノスタルジー、ロマンチシズム、倦怠感、喪失感、空気や匂いといったものを感じることができる作品世界が出現していました。

そうしたワンダーランドのような空間そのままに、カタログの内容も豊富な図版によって、村田ワールドにはまり込むだけでなく、建築家の青木淳さんによる、村田作品の「家族デッキ」に登場した高田家について、青木さん自ら書き起こした建築図面を含むまるでミステリーの分析のような「高田家の建築学的謎について」のテキストをはじめ、松浦寿輝「静謐な時間の流れる小宇宙」、保坂和志「パペットアニメという思考」など数多くのテキストで、村田さんの世界を分析されており、非常に読みでのある書籍にもなっています。もちろん、バイオグラフィー村田朋泰文献目録、年譜などカタログらしく資料類も充実しています。 (文:悦)

book data:
title: 「村田朋泰展 夢がしゃがんでいる」カタログ 
publisher: 平塚市美術館
author: 村田朋泰 
price: 1500(税込)