ヒーシーイット アクア / ウィスット・ポンニミット

 今回は先日紹介した、まだ出来てから2冊しか本を刊行していない若い出版社ナナロク社の3冊めの刊行物が届いたので紹介します。タイ在住のマンガ家"タムくん"ことウィスット・ポンニミットのタイで刊行したマンガシリーズ「ヒーシーイット」の日本版です。

これは"タムくん"がノートに描いた枚数もジャンルもバラバラのマンガシリーズで、著者による和訳と作品ごとの自作解説がついています。"タムくん"については、日本でもファンは多くいるので、いろいろ書くよりも、巻末の詩人の谷川俊太郎さんの解説に書かれた』『タムくんのアートには近ごろはやりの浅薄な癒しとか、優しさとかのコトバが似合わない意地悪なところがある。そこにぼくは魅力を感じているんだと思う。」というのが一番しっくりくると思います。 
谷川さんと"タムくん"とのつながりというのは、意外な感じがしますがそれは、"タムくん"の本を企画していたナナロク社の編集者が"タムくん"のこれまでの作品を、谷川さんに見ていただいたことから始まったそうです。谷川さんは、『部屋』という作品がすごくいいと言ってくださり、その『部屋』は、"タムくん"が書いた作品の中で、"タムくん"がもっとも気に入っている作品のひとつだったそうです。こうして二人は意気投合します。それはさらに、"タムくん"と谷川俊太郎さんのライブへとつながりました。マンガ家でありアニメーション作家であるタムくんと、日本を代表する詩人とのまったく新しいセッションとなったライブでは、マンガ『部屋』をスクリーンで流し、"タムくん"がピアノを弾く中で、谷川さんが『部屋』と共鳴するものを感じた『僕』という長編詩を朗読し、来場者から好評だったそうです。残念ながらわたしは見る機会を逸してしまったのですが...。そしてこの『ヒーシーイット アクア』は、その"タムくん"の代表作のひとつの『部屋』を収録しています。そのライブの共演がきっかけで、谷川俊太郎さんが解説を書いているという訳だそうです。 (文:悦)

book data:
title: ヒーシーイット アクア
publisher: ナナロク社
author:ウィスット・ポンニミット 
price: 1000(税込)