所幸則写真集『One second 01』

所幸則さんと言えば、90年代に天使や妖精を題材にしたファンタジックな写真で一躍時の人と化したものでしたが、いわゆる写真ファンの間では、いまひとつ評価が得られなかった感がありました。MACの普及によるデザインやアートの新しい潮流の旗手的位置づけもそうした評価を邪魔したのかもしれません。まあ僕も仕事でさんざん売りまくって多大な恩恵を被っていたにもかかわらず、今ひとつ関心が多くならなかった事は事実です。


ところが、この新しい写真集となった渋谷の風景をとらえたシリーズ作品、One second(ワンセコンド)は、従来の所さんのイメージを一新した世界を魅せてくれます。


渋谷パルコやハチ公口スクランブル交差点など、渋谷駅周辺の風景や建物をとらえたモノクロ作品は、1,400万画素のコンパクトカメラ「シグマDP-1」で1秒間に3コマ連写で撮影したものを1枚に合成したものだそうで、結果、人や車などの被写体に動きを出しています。


特に、渋谷という先人がビジュアルを撮り尽くしていると言ってもいい街を、新鮮なそれでいて、街そのものの味わいを的確に表現してみせているのは、感動ものです。私の周りの写真好きの人たちの評価もとても良く、所さんの新しい時代が始まったように思えます。 (文:悦)


book data:
title: 所幸則写真集『One second 01』
publisher: 所幸則
author: 所幸則
price: 1890(税込)