松本典子「野兎の眼」

松本典子さんが前に話していて、展覧会が終わったら持ってくると言っていた小さな写真集を今日御本人がわざわざ持ってきてくれました。
大阪のカロブックショップ&カフェにて2009年11月3日〜28日に開催された『「野兎の眼松本典子写真展』の画像とテキストの記録として、オンデマンド印刷により200部限定で制作された小冊子の写真集がこれです。

松本さんの実家の移住先、奥吉野の天川村で、かつて出会った14才の少女のまなざしに惹かれ、思わず「これから10年写真を撮らせて」と話しかけてから、10年以上にわたって撮り続けてきた珠玉の写真を展示した展覧会は残念ながら大阪とあって見には行けなかったのですが、その一端が垣間見えるこの小さな本は嬉しいものです。松本さん自身のテキストをはじめ、写真評論家の飯沢耕太郎さん、劇作家でポカリン記憶舎を主宰する明神慈さん、福音館書店編集部の印南直樹さんによるテキストも松本さんの写真と人が見えてくるもので、必読ものです。

松本さんはこの女性を撮り始めて3年目の写真で、かつて、ひと坪展のグランプリを取り知名度を上げ、そしてこの小さな写真集のブックデザインには、松本さんのヒット作となった「うさぎじま」の最初の本のデザインを手掛けた藤原日登美さんが担当するなど、ある意味、この小冊子には、この若い女性の10数年に及ぶ軌跡だけでなく、松本さんの軌跡も見えてくる気がします。
 (文:悦)



book data:
title: 野兎の眼
publisher: 松本典子
author: 松本典子
price: 500(税込)