ASPHALT 3号 / 唐仁原信一郎、桜井永治、藤原敦、岡本正史

 先日3号が出たばかりの写真雑誌ASPHALT。この雑誌については、最初に取扱に関して営業の電話を頂いた、この雑誌の発行人の一人である藤原敦さんと電話で話した事が印象深かったこともあって、その展開に注目していました。
藤原敦さんは、元々は建築デザインやビジネスマネジメントの仕事をしていた人で、奥さんがインテリアスタイリストで、現在では広告写真家として有名な泊昭雄さんの弟子だったことから、コマーシャル系の写真家との付き合いが多くなり、やがて、ひょんな事からコマーシャルスタジオを経営する事になり、写真への興味が深まっていったそうです。そこで写真を表現として考えるようになり、自分でも撮るようになった。ただ、日々接しているコマーシャル写真の表現以外の純粋な写真表現について考えるようになり、自分で撮る世界を模索していく中で、ゴールデン街の「ことじ」のスタッフであり写真家の岡本正史さんと知り合い、さらに店の常連であった写真家の唐仁原信一郎さんと写真表現について語り合う内にASPHALTの構想や思想が固まっていったそうです。
1号ではいわゆる同人誌的だったこともあり、編集がなかったという事を感じ、唐仁原氏がフォト・エディター長谷川明さんに、ASPHALTをやってもらいません?と声をかけたら引き受けてくれたそうです。そして、この3号では、人選に、蒼穹舎の太田さんも協力するなど、写真雑誌の方向性や形態も整いより大きな広がりを見せつつあります。わずか 1年前には同人誌然としていた雑誌が、作家個人の思いの強さが周りを巻き込み、みるみる雑誌として進化していく姿を見るのは興味深い事です。
それぞれ視座の異なる四人の写真を一冊にまとめているASPHALTの今回は、フォト・エディター長谷川明氏を編集長に迎えてからは、第2弾となる3号。今号でゲストの桜井永治氏はベテランのドキュメンタリー写真家。「人が生きぬく姿」をテーマに、1970年代の北海道の鉱山労働者や牧畜労働者の姿を記録。『氏の写真の優れている点は「引き」の良さである。これは映画でも同じで近年のアメリカのアクション(暴力)映画が迫力を出そうとしてやたらアップをするのは下手糞だからで、実は遠景を撮る方が技量がいる。桜井氏の写真のうまさがわかりにくいのは、普通の人が普通に見たように撮っているからで、これは本当はいちばん難しいのである。そのことを掲載作品を見て味わっていただきたい。』。
藤原敦さんの「跡」は2号に続く独特の連作写真。『この方法論はウジェーヌ・アッジェの方法にきわめて近いのである。』。
唐仁原信一郎氏の作品は、2号に続いて故郷・立川市を撮ったもの。今回は人物のスナップを中心にまとめている。『非常に自然な、見たままの写真というのが長所と言える』。『岡本正史氏の写真は一見文学散歩のよう』(『』は、長谷川氏の解説より引用)。  藤原さんによると、ASPHALTの活動で、今後、参加者の展覧会や、個人の写真集的な特集号なども予定しているそうで、今後の活動も期待したい存在です。(文:悦)

book data:
title:ASPHALT 3号
publisher: アスファルト出版
author: 唐仁原信一郎、桜井永治、藤原敦、岡本正史
price: 1500(税込)