John Heartfield - En La Coleccion Del IVAM ジョン・ハートフィールド

 ゴールデンウィークの始めに、粟津潔さんの訃報が入り、昨年暮れの木村恒久さん、年初の福田繁雄さんと、1960年代以後の日本の印刷メディアの変革と発展に大きな足跡を残されたデザインレジェンドが次々と去られていき、時代の流れを感じました。そういえばもう21世紀になっていたんだなあと、21世紀に入って10年近く経った今頃気付きました(笑)。中でも木村恒久さんは、僕がプロジェットの前に務めていたところでの最後の仕事となったトークイベントをお願いした人だったので、個人的にも残念な気持ちが大きかったものでした。
その木村さんと言えば、フォトモンタージュを思い浮かべる人は多いと思います。フォトモンタージュといえば、1920年代に印刷メディアの発展とともに現われた技法として、ラウル・ハウスマンやジョン・ハートフィールドがいたなあと連想していたら、店の棚に見つけたのが、ジョン・ハートフィールドの作品集です。

これは、2001年にバルセロナのIVAMで開催された回顧展に合わせて出版されたもので、彼の全貌が見れるものです。フォトモンタージュの名称が一般的になったのは、ジョージ・グロッスがハートフィールドのことをモントウール(組立て屋)と呼んだことからと言われています。ハートフィールドは本名ヘルムート・ヘルツフェルトというドイツ人なのに、当時のドイツの人たちが、英国人嫌いだったのに反応して、名前を英国風にジョン・ハートフィールドと変えたそうですから、相当なひねた人だったのでしょうね。作品も、代表作と言われる雑誌AIZの表紙を飾った作品群のヒトラーナチスの批判も直截的ではないし、何よりそのモンタージュの技法も他の作家の在り方と比べて、緻密で手が込んでいて、合成のあとが見えないスタイリッシュなのも、そのひねた感じを余計感じさせ、面白く愉しめます。 (文:悦)

book data:
title: John Heartfield - En La Coleccion Del IVAM
publisher: IVAM
author: John Heartfield
price: 6195(税込)