TANTA GENTE / Bruno Munari

本の愉しみを色々な側面から紹介できればいいなと思いつつ毎回書いているのですが、そうした愉しみそのものを追求したムナーリさんの本をやはり紹介しなければ片手落ちもいいところだと気付き、早速紹介。

まず今回は、ブルーノ・ムナーリが、"Edizioni per bambini"のひとつとして1983年に発売したものの復刻版TANTA GENTE。
形態そのものからあらゆるアプローチをしたムナーリ。この本では、まずLPレコードのジャケットサイズの紙の束がクリップで留められている。表紙となる1枚目は、中央のあたりにTANTA GENTE(人がたくさん)という書名があり、そのまわりにかわいいイラストの人々がたくさん描かれている。続く積み重ねられた紙たちは、飛行機や木や鳥などのイラストがそれぞれに描かれているトレーシングペーパー、詩の如くテキストがかかれている白い紙、穴の開いた紙、青や黄や黒などの色紙...と様々な素材と色の紙が68枚。

これは読者も自ら、物を作りたくなるように導く、創造することの楽しさを教えてくれる本。積み重ねられた紙の前半40枚は、ムナーリによって描かれたドローイングや、テキストの作品で、これがいわばムナーリ先生の模範作品。後半28枚はさまざまな素材や色の何も書かれてない無地の紙で、自分で、描いて絵本を作ろうというもの。

クリップで留めてあるだけなので、順番を替えるも天地を替えるも自由自在。トレーシングペーパーに直接絵を描いた下に入れる紙の色を替える度に印象が変わるのを感じるだけでも、色を選ぶ楽しさ、物を作る楽しさが生れて来る。まさに、これは本を楽しむという事のあらゆる意味を突き詰めた本であり、そうしたことに気づいた瞬間から子どもだけでなく大人にとってもとても楽しい玩具です。 (文:悦)

book data:
title: TANTA GENTE 
publisher: Corraini Editore
author: Bruno Munari
price: 6510(税込)