花椿ト仲條―HANATSUBAKI and NAKAJO Hanatsubaki 1968‐2008

デザイナーの仕事と言うのは美術家の仕事と違い、個人だけで成り立つものではないので、その仕事の素晴らしさが評価されにくいし、見えにくいとは度々言われ続けていることですが、アートディレクター仲條正義さんの1968年から2008年までの40年間分の『花椿』をまとめたこのエディトリアル作品集をみると、そうでもないなと感じます。

この本を見るとデザイン、ファッションなどをはじめとする戦後視覚文化の流れも垣間見ることが出来るだけでなく、ひとつの雑誌がこれだけの長きに渡って、変わらぬ新鮮な視点を維持し、常に刺激にあふれたクオリティの高いビジュアルを提供してきた事実がそこにあり、否応無くデザインの力というのが総合的なものであって、恐ろしく凄いものだと感じずにはいられなくなります。

1937年の創刊以来、戦時中の一時休刊を乗り越え、常に新鮮な視点による情報を発信し続けてきたこの資生堂の企業文化誌『花椿』が今も続いており、そこに企業の些末な方針による制約が入らなかったと言う事実を、この本の証言から知り、個人だけではなく、多くの人との関わりから生まれてくるデザインの持つ世界の素晴らしさや面白さをひたすら感じる一冊です。 (文:悦)

book data:
title: 花椿ト仲條―HANATSUBAKI and NAKAJO Hanatsubaki 1968‐2008
publisher: PIE BOOKS
author: 仲條正義
price:  4620(税込)