夢野久作「猟奇歌」


この作品は日本文学史に「ドグラマグラ」という一際ユニークな作品を残した小説家夢野久作の短歌を約百首収録しています。
選者は作・演出家、役者としても活躍している赤澤ムックさんです。

彼女は久作が生きた1920〜1930年代と、現代の日本に対して「希望が持てない時代」という共通項を見出し、当時無気力さや虚無感でいっぱいの中で作られた久作の歌にが私たちの心にもよく響くことを教えてくれます。
例えば、私が印象に残った歌は

煙突がドンドン煙を吐き出した
あんまり空が清浄なので…

です。


暗い世の中であっても懸命に明るく生きていく事だけでなく、少しだけ暗い方に歩み寄ることのスリルやなんとも言えない安らぎを、この作品によって味わうことが出来ます。

又、この作品は新進気鋭の注目作家重野克明による挿し絵によって暗く不安定ながらも美しく妖しげな世界が更に演出されています。

気になった方は是非手にとってみて下さい。  (文:篠)



book data:
title: 猟奇歌
publisher: 創英社
author: 夢野久作(著) 赤澤ムック(編)
price: 1470(税込)