山川彌千枝「薔薇は生きてる」
『今日は雪が降った。寝ていてはわからない私に、神様は、窓のでっぱりに散らして見せてくだすった。雪を食べた。天から降って来た雪は、白くて、つめたくて、さくさくとやわらかく、やわらかかった。』
起こった出来事を、そのまま素直に書いているだけなのに、このひとの書く言葉に魅力を感じるのはなぜなんだろう。
16歳の若さで、結核の為この世を去ってしまった山川彌千枝さん。
確かに、ある意味でドラマチックな人生だけど、こんなに「カラフル」な文章の日記はあまり見たことがなかった。
夜毎せきに苦しみ、血を吐き、熱にうなされる日々。
看護婦にキツく当たってしまう日や、元気な友達を妬ましく思う時もある。
でも、好きな本を読んだり手紙を書いたり、大好きな友達が会いにきたりしてパッと明るい日もある。
「楽しい」「悲しい」「苦しい」「嬉しい」「不安」「期待」。
喋るように、感情が指を伝ってそのまま文章になっているから、読んでいるとその色とりどりの気持ちが頭の中に伝わってくる。
病気が治ったらしてみたいことをワクワクと考えながらも、ある日は自分を大切にしてくれるひとへ向けて遺言を考えてみたり。
一人の女の子が、病気と一緒に生きている、そんな切ない日常も、この本の中ではなんだか明るくさわやかに感じる。
ぜひ手にとってごらんになってください。 (文:わらし)
book data:
title: 薔薇は生きてる
publisher: 創英社
author: 山川彌千枝
price: 1575(税込)