ポール・エリュアール 絵:オードリー・フォンドゥカヴ 訳:須山実

宇野亜喜良さんの絵本など、刊行点数は少ないながらいつも丁寧な作りの本を出版しているエクリの新刊は、イメージ豊かで光にみちた数多くの「恋愛詩」と「レジスタンス詩」で知られるフランスのシュールレアリスムの詩人、ポール・エリュアールが1951年に書いた唯一の童話『グランデール』。エクリの須山実さんがこの童話の絵本を最初に手にしたのはパリで、この絵本が刊行間もない1977年頃だそうです。日本では昔この絵本が「わたげちゃん」の題名で至光社から翻訳が出たことがあります。その時は、原著のどちらかと言えば、絵本絵本した可愛らしい絵をそのままに、文章だけを日本語に置き換えたというものでした。
今回のエクリからのは、絵も鮮やかで澄んだ水彩のもので、デザインもすっきりとし、新たなイメージが見られます。

須山さんは、日本にいる奥さんにこの素敵な本を教えたくて、自ら翻訳を付けて、プレゼントとして日本に本を送ったそうです。その時いつか出版してみたいとも思ったそうですが、オリジナルそのままではなく、エリュアールの世界が創造の翼で飛躍するような新しい形でと考えているうちに月日は流れていき、そんなある時、日本在住のフランス人女性アーティスト、オードリー・フォンドゥカヴの絵に触れた時、この人の絵なら本が出せると思いついたそうです。
結果、新たなイメージの飛翔に舞う身の軽い女の子グランデールの素敵な絵本が生まれたという訳です。
絵本の女の子同様にこの本も時空の長い飛翔を辿って生まれたのですね。 (文:悦)



book data:
title: grain-d'aile グランデール
publisher: エクリ
author: 作:ポール・エリュアール 絵:オードリー・フォンドゥカヴ 訳:須山実
price: 2100(税込)