建築はいかに社会と回路をつなぐのか


五十嵐太郎さんの新著は、オウム、サイードアフリカン・アメリカンジェンダー靖国、ゲットー、廃墟… ユダヤ人のゲットーや黒人建築家の歴史から現代の新宗教やグーグルストリートビューまで、建築を通じて「世界」を測定する試みとのこと。

内容は、五十嵐さんがこれまで発表してきた文章を集めたものであり、現在的な視点に基づく分かりやすさで建築の今が浮かび上がる本になっています。

五十嵐太郎さんは、注目を多いに集めた「新宗教と巨大建築」のような従来の建築史が置き忘れてきたような視点が目につきやすい感じだったのですが、ここに並ぶ文章をみていくと、かつての『磯崎新の建築談議』でのインタビュアーとして登場した際に、ほぼ対談相手となって、正統的な歴史と新たな視点とを、極めて分かりやすく建築史の旅というかたちで磯崎さんの発言から引き出してみせていたことや、「READINGS〈1〉建築の書物・都市の書物」での建築に関する書物の紹介の仕方での、極めて現在的な視点での分類がなされていたことなどを思い出します。

五十嵐さんの文章は、オーソッドクスなアプローチを踏まえた上での新しい視点の提示なので、とても分かりやすく、かつ今の建築や社会の問題点が見えてきます。まさにタイトル通り、建築はいかに社会と回路をつなぐのかになっています。 (文:悦)




book data:
title: 建築はいかに社会と回路をつなぐのか
publisher: 彩流社
author:五十嵐太郎
price:2310(税込)